選考ガイドラインと過去の類似事例から第98回大会選出校を読み解く
センバツ高校野球において、関東東京地区の「6枠目」は、毎年もっとも判断が難しい枠としてよく議論の対象になります。
関東大会、東京大会を通して一定以上の力を示した学校が複数並ぶ一方で、明確な差がつきにくく、単純な勝敗や順位だけでは結論が出ないためです。
まずは、選考の大前提となるガイドラインを整理しておきます。
選考ガイドライン
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秋季大会の試合結果、試合内容をもとに評価する。その割合は同程度とし、総合的に判断する
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試合内容については、投手力、打撃力、守備力、機動力など技術面のみならず、作戦の徹底、創意工夫、粘り強さといった試合運びや、フェアプレー、マナー、きびきび、はつらつとした動きといった野球に取り組む姿勢のほか、戦力のバランスやチームの潜在能力、大会を通しての成長ぶり、チームワークなども評価の対象とする
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複数の学校の評価が並んだ場合、できるだけ多くの都道府県から出場できるよう地域性も考慮する
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秋季大会については、府県大会についても参考とするが、選考委員が視察する地区大会の結果、内容を優先する
ここで重要なのは、「結果」と「内容」を同程度に評価する点、そして地域性は最後の調整要素に過ぎないという点です。6枠目は、最初から地域性ありきで決められる枠ではないということが重要です。
過去と似た構図――第89回大会・第96回大会
今回の構図は、
第89回選抜高等学校野球大会、
第96回選抜高等学校野球大会
と非常に近いです。
この2大会に共通しているのは、
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関東大会ベスト8敗退校で比較対象校が複数存在
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東京2位校も比較対象に含まれる
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コールド負けや大差敗戦の学校は早期に除外
という構図です。
最終的には、「どの学校が、より長く試合の緊張感を保っていたか」「強豪相手に、どこまで対抗できていたか」等も判断材料となりました。
今回も、まさに同じ局面にあります。
第98回大会・6枠目の比較対象校
今回、6枠目を争う学校として現実的に名前が挙がるのは、次の3校です。
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横浜(神奈川1位)
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関東一(東京2位)
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浦和学院(埼玉2位)
それぞれ、
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内容評価に強みを持つ学校
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結果評価に強みを持つ学校
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その中間に位置する学校
という、非常に分かりやすい役割分担になっています。
横浜の評価――「内容重視」の典型例
横浜は関東大会準々決勝で専大松戸に2―4で敗れました。
注目されたのは、残塁15という数字です。
得点圏に走者を進めながら決め切れなかった点は、確かにマイナス評価になります。
ただし、この数字は裏を返せば(いい方に解釈すれば)、
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四死球や安打で走者を出し続けた
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試合を通じて主導権を完全には渡さなかった
ことも意味しています。
ガイドラインにある「打撃力」「試合運び」「粘り強さ」という観点では、横浜は終盤まで勝機を持ち続けた学校と評価できます。
さらに横浜は、前年センバツ優勝校です。
過去の実績だけで評価されることはありませんが、秋の大会で一定の競争力を示したことは、「チームの潜在能力」「全国で戦える完成度」を裏付ける材料となります。
加えて、神宮大会枠で沖縄尚学が選出される可能性が高いことも、選考全体の空気を和らげる要素になります。全国的な実績校をもう1校加えても、全体バランスが崩れにくくなります。
関東一の評価――「結果」をどう捉えるか
関東一は、東京大会の決勝に進出し、優勝した帝京に4―8で敗れました。
スコアは接戦とは言い難いですが、敗退相手が明確な優勝校であることは大きな評価軸になります。
「どこに負けたか」という視点では、横浜と同等、あるいはそれ以上に評価される余地があります。
また、東京勢は選考委員の視察機会が多く、試合内容が把握されやすいという側面もあります。内容評価が横浜と拮抗したと判断された場合、「結果」をより重く見て関東一が浮上する可能性は十分にあります。
浦和学院の評価――浮上の余地と限界
浦和学院は関東大会で山梨学院に3―6で敗れています。
優勝校相手に試合が崩壊しなかった点は評価でき、関東大会で一定の競争力を示したことは間違いありません。
ただし、
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1点差ではなく3点差
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試合内容のインパクトが横浜ほど強くない
という点で、どうしても一歩劣ります。
さらに最大の懸念は地域性です。
関東大会準優勝校として花咲徳栄の選出が濃厚であり、同一県から2校目となる浦和学院は、「評価が並んだ場合」に不利になりやすい状況です。
横浜・関東一の評価が大きく崩れない限り、浦和学院は第三候補という位置づけになる可能性が高いです。
過去10年の傾向――比較枠では関東勢が優勢
ここで、近年の選考傾向も整理しておきます。
関東東京6枠目(比較枠・増枠時を含む)について、過去10年の選出回数を見ると、
明確な偏りが存在しています。
過去10年で、比較が発生した枠(増枠時も含む)において選出された回数は、
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関東勢:8回
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東京勢:4回
となっています。
さらに注目すべきは、このうち増枠が発生した2大会分を除いた場合です。
通常枠のみで見ると、
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全8回中、関東勢が6回
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東京勢は2回
と、関東勢が明確に優勢となります。
これは、東京大会2位という立場が決して有利な「特権」ではなく、あくまで関東大会ベスト8敗退校と同じ土俵で評価されていることを示していることになります。
言い換えれば、
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内容評価で関東勢が優位に立った場合
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明確な差がつかない場合
には、東京勢が選ばれるとは限らないというのが、近年の実情です。
今回のように、
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関東大会での惜敗
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内容面で強い印象を残した関東勢が存在する
ケースでは、過去の選考傾向から見ても、関東勢が選出される流れのほうが自然と考えられます。
この点を踏まえると、今回の6枠目も「東京2位だから」という理由だけで決まる可能性は低く、試合内容を最優先した選考が行われる公算が大きいです。
最終整理――3校の選考シナリオ
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本命:横浜
内容重視、2点差敗戦、潜在能力の裏付け -
対抗:関東一
優勝校相手の敗戦という結果評価 -
次点:浦和学院
一定の内容はあるが、地域性が最大の壁
おわりに
関東東京6枠目は、毎年「答えが一つではない」枠です。
だからこそ重要なのは、どの学校が選ばれても、選考委員側がその理由をガイドラインに沿って説明できるかになります。
今年は、内容を取るか、結果を取るか、あるいは地域性をどこまで考慮するか。
第89回、第96回と同様、選考委員にとっても非常に悩ましい判断となることは間違いありません。
データ・画像の引用元
本記事では、神奈川高校野球ステーション様に掲載されているデータを使用いたしました。
また、記事中の写真は高校野球における関連報道写真を引用しています。


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